姪の結婚
ずっと一緒に暮らしてきた姪の結婚式だった。
もう何年も久しいスーツ姿で臨んだ。
式は老舗の海に面したホテルの教会で行われ
ときどき目をやると祭壇の向こうの晴れた海が眩しかった。
式の後ホテルの庭で出席者全員と新郎新婦で記念撮影し
全員に配られた風船をカウントダウンで宙に放した。
新郎新婦の風船はハート型で特に風にあおられるがしばらく並んで飛んでいた。
バカ離れるなずっと一緒にいやがれ。
披露宴は新郎側の出席者だけで150人はいた。
遠くの新郎新婦を見ながら姪の実父側で唯一出席者である姪の従弟くんと話していた。新婦の近親者は母と姉、従弟くんと叔父の私。
式は騒々しく和やかで好感がもてた。
よく分からないが余興で新郎とその弟で腕相撲が始まるようだった。
そういえば宅配業の新郎は見かけによらず友人の中で一番力は強いと姪が話していた。
姪たちの前で強いところは一度も見せてなかったことを思い出した。
私は立ち上がり新郎の親友である司会者のところに行った。
「新婦の父です。新郎と腕相撲がしたいのですが。」
来ていないはずの新婦の父親に司会者は驚いたがすぐ
「分かりました、少々お待ちください。」と了承してくれた。
私はちょうどあと10日で47才。新郎は姪より年下で22。
姪である新婦とその友人たちは私に黄色い声援を送ってくれた。
すでに顔見知りの新郎は目を丸くして驚き、すぐ姪と何事かを相談していた。
バカ野郎っかってきやがれ。私は呼ばれて登壇するとすぐ眼鏡を外した。