ウィスキーマン男はつらいよ

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姪の結婚2

私が新郎に腕相撲を挑んだのは勝算あってのことではないし理由も分からない。たぶん酔っていたからだろう。

 

新郎が新妻である姪にどうしようかと相談したとき彼女は一言「やっちゃり!」と言ったらしい。

そうとも茶番はごめんだ、私は真顔で近づいてくる新郎を見て安心した。

テーブルクロスを掛けたワゴンに新郎とひじをつき手を握ぎり合わせた。彼の手は私よりかなり厚く力強さを感じた「本気で来い」私は言い聞かせるように新郎に言った。

開始の掛け声を皆で合わせるため司会者役が披露宴の参加者に呼びかけた。

「皆さんいいですか?それではレディー・・・ファイト!」

開始の合図とともに私は倒しに行ったが新郎は難なく受け止め反対に力強く押し返してきた。腕が一気に私側に傾いたので私は折れんばかりに自分の腕に力をこめ、半分以上私の方に倒れたところで何とか傾くのを止めた。

私も彼も素人だから腕相撲ではひたすら力をぶつけ合うだけだ。

彼が力を入れ直す隙に中央付近まで押し返すのだがまたすぐに押し戻されてしまう。

新郎の三度目の攻撃で私は腕の力だけでは足りず左足を浮かせ自分の腕にぶら下がるように体重をかけて抵抗した。

それもかろうじて耐えたときにはもう腕の感覚がほとんど無くなっていた。

新郎が四度目の攻勢に出たとき私は「姪はお前にはやらん。」と叫んで負けた。私は満面の笑顔だったという。

私の予想外の健闘と負けっぷりは余興を大いに盛り上げ私はたいそうな喝采と拍手を浴びた。

負けたものの私は結果に満足していた。この年で若い力を一度ならず受け止めることができたのが素直に嬉しかった。大人でいるより男でいたい。